のら猫とどら猫

国民的アニメ『サザエさん』のオープニングには、

「お魚くわえた どら猫 追っかけて」という歌詞があり、

「どら猫」が登場する。

誰にも飼われていない猫のことを「のら猫」や「どら猫」と呼ぶことがある。

「のら猫」(野良猫)とは、

人間の生活圏にいる猫のうち、

飼い主がいなくて、

住みかが定まっていない猫のことである。

その語源は、「のらりくらりしている猫」であり、

「のら」に漢字の「野良」を当てたものである。

「野良」という言葉は、

「野・野原」や「田・畑」の意味であり、

「田畑に出てする仕事」という意味で「野良仕事」のような使われ方がされる。

「野良猫」の漢字は当て字とされるが、

住みかが定まらず野原や田畑にいる猫という意味にも捉えられる。

ただし、山野で生活する野生の猫は「野猫」(のねこ)と呼んで、

人間の生活圏にいる「のら猫」とは区別される。

一方、「どら猫」は江戸時代から使われている言葉で、

「のら猫」がよその家からものを盗むと「どら猫」になる。

「どら猫」とは、ふてぶてしくて、

盗みをする猫のことであり、

「のら猫」との共通点は飼い主がいないことである。

「どら猫」の「どら」は漢字で「銅鑼」と書く。

銅鑼(どら)とは、金属製で円盤の形をした打楽器のことであり、

枠に吊るして、桴(ばち)で打ち鳴らす。

仏教の法要や歌舞伎の効果音楽、

船の出帆の合図などに広く用いられる。

なぜ「どら猫」が盗みをする猫を意味するのか。

「どら猫」より以前に同様の意味の言葉として、

「どら息子」という言葉があった。

「どら息子」とは、怠け者で働かず、

親のすねをかじっている子どものことを意味する。

そんな子どもは親の金を尽きさせてしまう。

そこから「お金が尽きる」→「金を尽く」→「鐘を突く」→「銅鑼を突く」という言葉にかけて

「どら息子」と呼ぶようになったという説がある。

このほかに、酒色・ばくちなどの道楽にかまけて、

遊んでばかりいる息子という意味で「道楽息子」と呼ばれ、

これに由来して「どら息子」になったという説もある。

働かず遊んでばかりで親の金を尽きさせてしまう「どら息子」と同様に、

ものを盗んで人の金を尽きさせる猫という意味から「どら猫」と呼ぶようになった。

これらのことから、

サザエさん』のオープニングに出てくる猫は、

「どら猫」という表現になっているため、

人の家の魚を盗んだ「のら猫」であることが分かる。 

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