戦後ソ連での強制労働から生まれた

お題「ふだんから気軽に口にしている言葉の語源」

ノルマ

第二次世界大戦の末期、

ソ連軍が満州になだれこんできた。

すでに弱体化していた日本の関東軍は、

ほとんどなすすべもなく降伏、

多数の兵士らが捕虜になった。

兵士らはソ連領内のシベリアに連行され、

木材伐採などの強制労働を課されることとなった。

それが、いわゆる「シベリア抑留」である。

抑留された日本人は、日本政府の調べでは

約75万5千人。

そのうち、約5万5千人が再び故国の土を踏むことなく、

命を落としたとみられている。

やがて、抑留を解かれて帰国した人々は、

一つの言葉を持ち帰った。

それが「ノルマ」である。

ノルマは、労働者に割り当てられる労働の基準量。

要するに、売り上げ目標など、

働き手が達成しなければならない成果の

最低基準量を意味する。

シベリア抑留中、元日本兵らは、日々、

木材伐採量などの過酷なノルマを課され、

ソ連兵から「ノルマ、ノルマ」と責めたてられていた。

彼らがその言葉を日本に持ち帰り、

戦後復興期の日本社会に広まったのである。

その言葉が、

その後の日本社会でも生き残り、

働き方改革が叫ばれる現在でも、

「ノルマに追われる」、

「ノルマがきつすぎる」などと使われているわけである。