年齢を重ねると耳が遠くなると言われるが、
一般的に加齢により高い周波数の音から聞こえにくくなるという特徴がある。
耳の穴の入口から約3cmのところに「鼓膜(こまく)」があり、
鼓膜は人が空気中の音を最初に感じる器官である。
その音の情報が最終的には電気信号に変換され、
脳に伝わるが、
その途中に「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」と呼ばれる細かい毛を持つ細胞が数多くある。
有毛細胞は内耳(ないじ)の
「蝸牛(かぎゅう)」と呼ばれるカタツムリのような螺旋(らせん)状をした器官の内側に並んでいる。
そして、
この有毛細胞は「感覚毛(かんかくもう)」という細い毛のような束を持ち、
その感覚毛が音の振動により揺れると興奮し、
音を電気信号へと変換する。
このように重要な役割を持つ有毛細胞は、
加齢や騒音の影響などで傷つき、壊れてしまう。
すると、音を感じにくくなり、
「難聴(なんちょう)」という周りの音が聞こえにくい状態になる。
その中でも年齢以外に特別な原因がないものを「加齢性難聴」と呼ぶ。
そんな難聴の原因にもなる有毛細胞は、
一度壊れてしまうと元には戻らない。
そのため、年を取るにつれ、有毛細胞が徐々に傷つき、
音が聞こえにくくなる。
また、有毛細胞は蝸牛の入口付近が高い音、
奥に向かうほど低い音に反応するという特徴がある。
蝸牛の入口に近い有毛細胞のほうがより多くの音にさらされることになり、
傷つきやすい。
そのため、個人差はあるが、
一般的に人は年を取ると高い音から聞こえにくくなる。
また、高い音で構成される子音のカ行・サ行・タ行・ハ行などの一部の言葉が聞き取りにくくなる。
例えば、「佐藤(さとう)」と「加藤(かとう)」、
「7時(しちじ)」と「1時(いちじ)」、
「広い(ひろい)」と「白い(しろい)」を聞き間違えやすくなる。
一方、母音の「ア・イ・ウ・エ・オ」は比較的低い音であり、
子音よりも聞き取りやすい。